はじめに

わたしの問い
 ある人がいました。
 
 
 その人はなんでもない人でした。
 特別な能力もなく、名声もお金も人よりたくさんあるわけでもありません。
 
 
 けれど、お金もちも、まずしい人も、わがままな人もその人の話はよくききました。
 なぜかその人の身のまわりには幸せがちょっとだけおおくありました。
 
 
「あなたはほかの人とちがうようにみえます」
 
 
 ある時、別の人がたずねました。
 
 
「そうだろうか? わたしが死んだらそのうちみんなはわすれるだろう。社会をかえたわけでもないし、墓石以外に名前がきざまれることもない。その程度の人間です」
 
 
 その人は淡々とこたえました。
 
 
「だけど、みんながあなたに一目おいています。どうしてそんなに丁寧に人とせっすることができるんですか?」
 
 
「ただ、ほかの人より『なんで』と自分にたいしてかんがえることがおおかっただけ。ほかの人とはちがった問いをもっているのかもしれない」
 
 
「自分だけの問いをもっているから、あなたは特別なんですね」
  
 
「いや、そうみえるだけです。あそこの売店のおばあちゃんは30年間かかさず、店にたっているのをしっていますか? となりの家の少年は、毎日虫の観察日記をつけています。どちらもわたしにはできない特別なことです。だから、それぞれなにかしらかりたてる問いがあるのでしょう。ただ、それに自覚的であるかないかです」
 
「わたしにもあると?」

「あるでしょうね。ぜひあなたのお話もきかせてください」 

「わかりました。ではその前に1つだけ。ほかの人にはないあなたの問いってなんですか?」
 
 
「そうですね、【わたしの問い】は−−」

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