私の体験学習をふりかえる

 昨日、南山大学の「私の体験学習をふりかえる」という講演会に行ってきました。
 まだまともに確立されていない1973年から「ラボラトリー方式の体験学習」を手探りで作り上げてきた星野欣生先生、津村俊充先生、グラバア俊子先生の3人が講師として対談されていました。
 今まであるようで対外的にはなかった講演会ですが、今回で星野先生が引退されるということで最初で最期になるそうです。
 不勉強で、グラバア先生以外は存じあげなかったのですが、もっと早くに知っておけばよかったと惜しくなりました。
 
 
・体験学習においてなにを大事にしているか

 プロセスから学ぶこと。
 なによりもこれが一番大事である。結果がどうあれそこから学ぶことをしなければ、先には進めない。だから、結果よりもそのプロセスでなにが起こっていたかを丁寧に見ていく必要がある。
 今の体験学習はコンテント(なにをするか)に傾倒しがちで、もちろんそれも大事だけれどプロセスとのバランスをとることを忘れてはいけない。
 そして、プロセスを見ていくためにはフォローすることが必要になってくる。現場ではなにが起こっていたのかがわからないことがある。後のフォローをしっかり行うことでその人の体験学習はようやく完成される。ただ嫌だった体験の中にも宝石が街っているかもしれない。フォローがなければそれに気づくことができない。

 また、学習者の自己成長できるかに焦点を当てる。学習の中で自己発見をして、「やってよかった!」という思いが懐けるか。そのためには対話者の1人として、1人の主体としてその場に関わっていけるか。
 開講当時、ラボラトリー式の体験学習が手探りの状態で、南山大学では学生の反応という生の情報から分析し、自己成長を促進してきた。とにかく学生のことを真剣に考えていたことが言葉の端々から伝わってきました。「学生の出席をとるか否か」を深夜に涙ながらに語り合っていたというエピソードもあった。
 3年経ったら、どんなに上手くいって惜しいと感じたプログラムを一新する。破壊と再構成によって今のプログラムができあがってきた。

 丁寧な関わり方もまた必要。
「なぜ?」というシンプルな問いはとても便利だけど、一方的な問いを続けることは対話者を苦しめてしまう。
 1970年代のTグループ(10人程度のグループで何度もセッションを行う人間関係トレーニング)では、トレーナーがずっと黙り続けて「どう思う?」とぼそっとセッションの最後に呟いてどこかに行ってしまうということもあったそう。相手を不安にさせて追い込んで、最後に優しくすることは洗脳の手段ではあるけれど、それは相手を操作することに他ならない。
 私も良かれと思って人に問う。
 なんで? どうしてそう思う? それでいいの?
 けれどそうやって質問を続けていたら、言葉が出なくなってしまう。だから、「自分はこう思うけれどどう思う?」と自己開示の伴う質問をすることで安心安全に配慮した関わりができる。
 
 
・ファシリテーターのあるべき姿
 
 自由であること。
「こうしなきゃいけない、なんてことはなにもない」「自由とは自らによることである」(星野)
「自分がなにかを追い求めることほど虚しいことはない。それよりも自分らしくいる中で感じることを言う」(津村)
 ファシリテーターに限らずだけど、気の利いたことをいわなければいけないとか、相手のためになるようなことを言わなければいけないという想いが湧き出てくる。だけど、そんなことは必要ない。1人の人間としてその場にいて、気づいたことを思うままに言えばいい。

 全体を見ること
 特に人の多い場では全体を把握することは難しい。だからこそ、特定のグループに関わらず、歩き回ってその場全体を俯瞰していく。なにか気づきがあったら、個人にフィードバックするよりも全体に向けてフィードバックする。そうすると、対象の個人は当事者性を感じて気づきを得ることができるし、同じような問題を抱える別の人も気づきを感じてくれるかもしれない。

 
・これからのラボラトリー方式のファシリテーションに期待するもの
「社会を変えるためのムーブメントの種を蒔いていく」(グラバア)
「成熟された社会を作る」(星野)

 体験を絶対化しない
 体験学習は実りの多いものではあるけれど、体験に縛られてはいけない。あの時できたから、別の機会でもできるかといえば必ずしもそうではない。プロセスに目を向ければ、その場、そのメンバーだからできた可能性もある。相対的なものとして体験をとらえることで、「体験はゆらぐもの」としてとらえる。
 
 技術じゃない
 本質的なファシリテーションはしっかり聴きとることだ。付箋を使うとか、色ペンを使うとかそういう技術は二の次である。
 
 以上、まとめ。
 ファシリテーションという言葉がまだ知られていなかった時からずっとファシリテーターとして活動されてきた方達なので、重みが違いました。
 星野先生が「最近、ようやく自分が目指すようなファシリテーションができるようになってきたんですよ」と笑いながら何気なく言った台詞が計り知れない凄みがありました。いやはや、驚嘆ですね。
 

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コメント

  1. […]  昨日の講演会の後、午後からは日本体験学習研究会のワークショップに参加しました。 […]