呼吸入門(斎藤孝)

 

 呼吸というものは誰しもできるものである。
 人工呼吸器で生命を維持することはできても、自力で呼吸ができなければ私達はまともに活動できない。

 ただ心臓の鼓動を普段は意識しないように、呼吸も意識する機会は少ない。しかし、呼吸というのはとても重要な機能である。なぜなら、生命を維持する自律神経は通常自分ではコントロールできないけれど、呼吸に関してはペースを早めたり遅めたり一時的に止めることもできる。
 だから、ヨガを含めたあらゆるボディワークや武道、禅、瞑想などでも呼吸は重要だとされている。
 
 著者の斎藤孝さんの語る身体論と教育論は、私自身の考え方と親和性が高く、読んでいて共感を覚えることが多い。
 誰にでもできるようにシンプルさを追求しながらも、効果があるような「型」を重んじて、創ろうとする姿勢はただただ尊敬する。本書は20年に及ぶ呼吸研究の集大成である。
 
 日本の伝統芸能から現代の若者まで多彩な視点から呼吸を分析して、呼吸の意味や効果、ノウハウについて語られている。

 人を見る上で呼吸は重大なヒントになる。情緒が不安定な人は、やはり呼吸も不安定だったりする。悲しくて泣く時はしゃくりあげるように息をヒックと吸う。緊張してくれば、自然と身体が緊張して呼吸は浅くなる。
 しかし、それを逆手にとって考えてみると、深い呼吸をすれば精神は安定し、集中力は高まり、リラックスできるということでもある。著者は長年の研究の果てに「三・二・十五」の型を見出した。3秒吸って、2秒お腹に力を込めて、15秒かけて吐く。ただ、それだけ。しばらくこれを実践しようと考えているので、また機会を見て効果のほどを記す。
 
 ところで、本書を読んでいてコミュニケーションが苦手な人は呼吸に意識を向けた方がいいのではないかとも思った。自分のも他人のも意識して、「息を合わせる」。それができていないから、気まずさが生まれてしまうのではないだろうか。
 声を出すということは同時に息を吐くということでもある。相手と言葉が重なってしまう時、それは呼吸が上手く噛み合っていないのだ。一方で、気の合う友人との会話は阿吽の呼吸で、滑らかに言葉を掛け合うことができる。それは間違いなく息が合っている証拠なのだ。
 であるならば、息を合わせることができれば、初対面の人との関係を築くことも難なくこなせるようになるはずである。

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